2015.06.27

「予告犯」☆☆☆☆

 インターネット上にアップされた新聞紙製の頭巾を被った男の動画で予告された、問題を起こした食品会社の放火事件。それを機に、そのシンブンシを名乗る男たちによる、動画による予告とネット悪の粛清が繰り返されていく。

 宣伝にあったように、この入口でこの出口。派手な犯罪でぶちまけておいて最後はちょっといい話。人はそんな小さなことのためでも、ここまで大きなことをやることがあるというのがこの映画の主張ではあるけど、それができる人は実はそうせざるを得ない状況にあるというのがこの映画の裏主張でもあると思う。主人公がどれだけひどい目にあってきたか。そういう経験があるから他人に優しくなれるのであって、普通に暮らしてる僕らには絶対にできないことではあります。
 しかし主人公たちはスーパーマンすぎるでしょう。あそこまでなにもかもリサーチできて、その場所に行けて、警察の裏もかく。あの能力があればもっと他の素晴らしいこともできるだろうと思う反面、あれだけの人間でもこんなことをしなくてはならない状況にあるというのはやはりツラいね。

(ムービル横浜)


「ラララ・ランドリー」☆☆☆

 ミュージシャンとしてメジャーデビューが決まった優子だったが、歌うことに自信を無くし、田舎に帰って来る。

 主人公を演じた田中美里さんは歌手が本業らしく、劇中でも見事な歌声を披露していてそれだけでも十分に満足感があるのですが、例えば中途半端に悩んで帰省してきた主人公に対して不満げに接していた弟が実は子供の頃の姉弟の想い出をとても大切にしていたかのような行動をとっていたことが分かるくだりなどは好きでした。楽しい映画ですよ。

(TV)

http://www.vipo-ndjc.jp/project2012/suzuki/film.html


2015.06.23

「新宿スワン」☆☆☆☆

 一文なしの白鳥龍彦は、新宿歌舞伎町で知り合った街のスカウトマン真虎に誘われてスカウト会社バーストの社員になる。それは歌舞伎町をゆく女性たちに声を掛けては、水商売や風俗の仕事をあっせんする仕事であった。

 面白かったです。風俗のスカウトとか全く想像もしたことのない世界で、ましてやこんなジリジリした縄張りや派閥の争いが絡み合ってるとか、どこまで現実にあるのかはともかく、こんな世界もあるんだと知っただけでも興味深く観れました。知らぬ世界に触れつつ先の展開への興味が切れないので緊張感もありました。

 それにしてもこんなストレートな映画を園子温が撮るとは。登場人物はみんなまともだし、展開にひねりもない。知らずに観たら絶対園子温とは気がつかないでしょうね。今までのイメージとはちょっとずれた役柄の綾野剛さんがとにかく好演。真野ちゃん可愛いけどエピソード的にはいまいち意味が分からなかったなあ。

(TOHO川崎シネマズ)


「動物の狩り方」☆☆☆

 父親に殺されそうになった過去を持つ美由紀は、ある日森の中で野性的な生活を送る菊池という男と出会い、その生活に興味を持ち交流を持とうとする。しかしあることから菊池の住んでいた小屋が無くなってしまう。

 「告白」から「カラスの親指」の間と思わしき、能年玲奈ちゃんの出演作。つらい過去を抱え、学校にも馴染めずに孤立する少女が山奥で一人暮らす野性的中年にシンパシーを感じ、そのサバイバル自給自足生活のノウハウを学ぼうとする姿に共感できるか。もちろんできません(^^;)が、彼女が本気で自分の世界を見つけ出そうとしているのはよくわかり、そんな想いが踏みにじられそうになるのに対してはやはり悲しくなる。ただ彼女のためとか言いながら彼女を追いつめる友人の姿は僕たちそのものかも知れないので身が痛いよ。

(TV)

http://www.vipo-ndjc.jp/project2010/mori/film.html

「あこがれ」☆☆

 孤児院「あかつき子供園」出身で今は老舗せともの屋の養子となっている吉岡一郎は、同じ孤児院の出身である西沢信子と再会し、恋に落ちる。しかし一郎の両親は二人の関係に反対し、信子は一郎の前から姿を消す。

 映像がキレイで70年代の映画かと思ってたら、60年代でした。時代感覚が全く分からず戸惑ったし、タイトルは全く内容と関係なく驚きました。
 施設に入ったときには粗雑で反抗的だった主人公が大人になったら誰からも愛されるような真面目で穏やかな女性になっていて、すごい施設だなあとこれまた驚いたけど、それを裏付けるような描写は一切なし。タイトルから予想できるようにかわいらしいラブストーリーかと思いきや、中盤からは家族や親子の話の方がメインになって、そちらが片付いたと共にラブも終着するという不思議な映画でした。

 内藤洋子さんは娘の喜多嶋舞さんにやっぱりそっくり(逆か)で、でこでこでこっぱちなおでこがキュートで当時大人気だったというのも納得ですよ。

(TV)

2015.06.08

「夫婦フーフー日記」☆☆☆


 コウタは17年間友人だったユーコがお見合いすると知り、思い立ってプロポーズする。晴れて結婚した二人だったが、子供ができたとたん、ユーコがガンで死んでしまう。ほどなくしてコータの前に死んだはずの彼女が出現する。

 17年間友情しかなかったって、そりゃ無理がある。絶対男の方は意識しまくりに決まってる。いつの日か自分のものにしたいと思い続けていたに決まってる。えっ偏見ですかそうですか。でもルックスは永作博美だよ?

 まあ面白いけど、泣くに至らず。愛する奥さんを亡くしてひきづるのは仕方ないにしても、大事な息子への愛情は全く感じられないのはどうしたものかね。
 時間が行ったり来たりするのはいいとして、そのつながりがいまいちわからない時があり、ちょっと悩む部分もあるね。

(チネチッタ川崎)

「あかり」☆☆☆☆

 結婚式をひかえ帰省した環は、知的障害を持つ妹のあかりと買い物へと出掛けた。嬉しそうにはしゃぐあかりだったが、環が目を離した隙に行方不明になってしまう。

 実は結構感動した。知的障害の妹を見つめる家族の眼差しの優しさに涙が出る。きっと綺麗事だけではないいろんな辛さがあるんだとは思うけど、みんながこうして笑う瞬間があればいいさと家族だけが連帯できる幸せなひとときが本当に幸せに見える。姉の結婚などでこれからもどんどん家族の形は変わっていくんだろうけど、それでもきっとあの家族は幸せでしょう。そもそも姉が結婚したってことは、その結婚相手もきっと素晴らしい人だもんね。

(TV)

「おとこのこ」☆☆☆

 中学3年生の賢と透はイジメにあっている。賢はもがき苦しみ、透に理不尽な怒りをぶつけてしまう。落ち込む賢は家庭教師の理恵のバイクに乗せてもらう。

 イジメの描写は厳しく、やっぱり見ててつらい。勇気を持って少し対抗する姿があったとしても、きっとその後また辛い日があるだろう。
 でもそんな中で友達との友情を感じ取り、やさしき家庭教師のお姉さんに抱きしめられ、お姉さんのおっぱいを触って羨ましがられて誇らしげ。そうして一つずつ大人になっていく少年の力強い姿はやはり応援したくなるよ。

(TV)

2015.06.07

「セシウムと少女」☆☆

 17歳の高校生ミミはいつもの日常に妙な疎外感を感じていた。ある日、彼女は雷神のらーさんをはじめ、風神のふーさんといった神々と知り合う。ミミは神様たちとどこかに行ってしまったおばあさんの大切な九官鳥を捜すことにする。

 夢か現かよくわからないような展開はまあまあ面白い。何度か挿入されるアニメーションもどれも個性的で面白い。
 ただ途中で神様たちが原発談義に花を咲かせ、しかもその内容が僕からすると到底共感できないものである時点で、この映画は拒否。原爆と原発は一緒に考えるべきなのかね。僕のスタンスでは全然違う。

(横浜ニューテアトル)

「ゲキシネ 髑髏城の七人」☆☆☆☆


 天正18年、かつて織田信長の家臣だった天魔王は関東髑髏党を率いて天下統一を目論んでいた。一方、捨之介という者が彼らの前に現われ、その野望に立ち向かうことになる。

 かつて劇団新感線が好きだった時期があって、10本くらいの舞台を観ているのですが、今は足が遠のいています。このゲキシネのシリーズも気になってはいたものの、舞台を映像で観るという感覚があまりつかめていなかったので観たことはありませんでした。今回テレビでやってたというショボい理由ではありますが初めて観ることができて、あの頃の激情が復活しました。また劇場に行きたい! 他のゲキシネも観たい! 面白かった!
 映画は何回も観ることができるけど、舞台は1回きり。同じ舞台は2度とないのが舞台の魅力でもあります。また舞台は座席によって観る角度が違い、同じものを観ている人は実は一人もいないですよね。こうして映像になると同じものを全員が、しかも何回でも観ることができるし、アップなども見れるので表情の意味も出てきて全く違うものに変わります。ゲキシネってのは不思議なメディアだなとつくづく思う今日この頃ですよ。

(TV)

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