映画賞と音楽賞
ここにも紹介している通りこの時期になると映画賞がいくつか発表になっていて、僕なんぞはいろいろ楽しませていただいているんですが、ふと考えることがひとつ。映画賞と音楽賞の違いです。
多くの映画賞はその映画自体がヒットするしないはほとんど関係なく、ただその内容や演技にのみ評価がなされています。例えば今年多くの賞を取っている「血と骨」はおそらくはヒット作とは言えないでしょう。「誰も知らない」はそれなりにはヒットしましたが「世界の中心で、愛をさけぶ」や「いま、会いにゆきます」、「ハウルの動く城」あたりとは比べようもありません。でも誰もそれを疑問視して”今年の作品賞は「世界の中心で、愛をさけぶ」でなくてはおかしい”とは言いません。みんなそんなもんだと分かっているんです。
それに対してほとんどの音楽賞はその曲がどれだけヒットしたのかが評価の大きな要素になります。去年のレコード大賞はミスチルの「Sign」、有線放送大賞は氷川きよしの「番場の忠太郎」だったと記憶していますが(違ったらすみません)、どちらも年間を通して大きなヒットをつかんだ曲(人)が受賞したと言えるでしょう。でもどちらも2004年に一番CDが売れた曲ではありません。一番売れたのは平井堅の「瞳を閉じて」かオレンジレンジの「花」でしょう。でもどちらもこういった賞を受賞していません。2003年も明らかに一番売れていたSMAPの「世界で一つだけの花」はこういった賞を受賞しませんでした。大きな理由は本人たちの辞退ですが、でもそのために一番売れた曲が受賞曲でないことに大きな違和感を覚えてしまうのも事実です。
映画賞と同じようにヒットの大小に関わらずその作品そのものを評価したとすれば大きなヒットをしていない曲が大賞に選ばれたとしても違和感がないはず。2004年のレコ大ノミネート曲は聴いたことのない曲が半分くらいを占めていて大きな違和感がありましたが、それも曲自体の評価だとすれば当然のことのはず。でも誰もそうは思わないんですね。
映画賞はヒットに関係なく映画自体の質に対して、音楽賞は曲自体の質は関係なくヒットしたかどうかという点に対して送られるものだと、僕らは自然に刷り込まれてきてしまっているのです。
やはりこれは映画と音楽の質とヒットの相関係数の差異によるものなんでしょうか。音楽のヒットは曲自体を聴いて「よかった」と思った人が支えています。すなわち曲の質がヒットにほぼ直結する形です。まあもちろんまず聴いてもらうことが前提なのですが、この”まず聴く”という部分にコストはほとんどかかりませんので、やはりコストが支えるヒットというものは曲の質が大きく関わっています。
それに対して映画のヒットはそうではありません。映画はまずノーコストで観るということができません。始めて観る人たちがそのヒットを支えるのです。すなわちヒットする映画は「面白かった映画」ではなく「面白そうに見えた映画」です。映画のヒットは(よほどのリピーターがいない限り)映画自体の質には直結しません。大ヒットしていながらも観た人のほとんどがガッカリしたなんて映画も時にはあります。結局のところ映画がヒットするしないは公開形態や宣伝形態によるところがほとんどなのです。(まあ先に観た人の口コミ、というやつもありますからある程度のところまでは映画自体の質も関係していますが)
ということで音楽に関しては「ヒットする」と「質も高い」はニアイコールですので、賞を得るべくはヒットしたものとなり、映画はこれが必ずしもイコールではないがために賞を得るべくは本当に優れたものと言うことになります。僕らはそれを無意識に感じ取っているということなんでしょうか。よくできています。
ただもちろん賞を取った映画がすべて優れたものであるというわけではないところがミソでもあるんですが、、、。(^^;)
« 第59回毎日映画コンクール | Main | 映画を100本観ない理由 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 日本インターネット映画大賞2016投票します(2017.01.09)
- 240ヶ月、すなわち20年(2014.01.16)
- 日本インターネット映画大賞に投票します(外国映画編)(2011.01.10)
- ついでに外国映画ベスト16(2011.01.06)
- 日本インターネット映画大賞 外国映画部門へ投票(2010.01.09)
The comments to this entry are closed.
Comments